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若葉折々(校長通信)

本校ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
今年度も、適宜、校長通信を発信してゆきますので、ご覧いただければ幸いです。


○7月20日(金)
 1学期終業式において次のようなお話をしました。
 

 おはようございます。今日は1学期の終業式です。今学期の自分の学校生活を振り返り、明日からの長い夏休みを有意義に過ごしてほしいと思います。
本日は、皆さんが夏休み中もしっかりと自らの目標に向かって行動してくれることを期待して、“grit”「やり抜く力」について、お話ししたいと思います。
 

 さて、皆さんは「大日本沿海輿地全図」という地図を知っていますか。日本史受験の3年生はすでに勉強しているかもしれません。江戸時代の終わり頃、実際に測量を行い作成された、初めての日本全図です。その正確さは驚くべきもので、現在使用している地図と重ねてみても海岸線はほぼ重なり、実際に昭和の初め頃まで使用されていました。では、この地図を作った人は誰でしょう? そうです、伊能忠敬です。

 伊能忠敬はこの地図を作製するために、17年間、日本全国を歩き回りました。歩いた距離の総合計は4万km以上。これは地球を一周する距離です。彼は正確な地図を作製するため、海岸線に沿って細かく測量を行いましたが、海岸線には通常、きちんとした道はなく、砂や岩ばかりで、けわしい崖や満潮時には渡れない浜など相当、困難な行程だったようです。しかも、彼がこの地図作りに着手したのは、50歳を過ぎて家業の商売を隠居してからです。なぜ、彼は老後の余暇を楽しむことなく、このような困難な事業に取組んだのでしょう。

 伊能忠敬は、地図作製に取り掛かる前は千葉県佐倉の商人で、米の売買や運送業、金融業にも手を広げ、現在のお金で50億円にものぼる資産を築いた大実業家でした。

 ただ、彼は子供の頃から、算術などの学問に強い興味を持っていて、その才能は周りの人々からも高く評価されていました。しかし、彼の育った環境では学問の道を志すことは難しく、17歳の時に商人の家である伊能家の婿養子となり、傾いた家業を立て直すために商売に全力を尽くしてきたのでした。そして、ようやく商売も軌道に乗ってきた49歳の時に長男に家督を譲り隠居をしました。そして、彼は、子供の頃からの夢を実現すべく、江戸に出て、当時最も著名な天文学者の高橋至時(よしとき)に弟子入りし、50歳から学問に打ち込むことになります。

 伊能忠敬は西洋の天文学を学んでいくうちに、先生である高橋至時の影響もあり、地球の大きさを知りたいと強く思うようになりました。当時、すでに地球は丸いということは分かっていました。それゆえ、北極星を2つの地点で観測し、見上げる角度を比較することで、緯度の差が分かり、2つの地点の距離が分かれば地球の外周が割り出せると考えていました。ただし、正確に調べるためには2つの地点にはかなりの距離が必要でした。

 その当時、江戸幕府はロシアなどから日本を守るため、蝦夷地(現在の北海道)の正確な地図を必要としていました。そこで、高橋至時は幕府に蝦夷地の地図を作ることを願い出て、忠敬に蝦夷地までの測量をやってもらおうと考えました。ほどなく、幕府の許可は降り、伊能忠敬は測量の旅の第一歩を踏み出すのです。

 忠敬一行は、昼間は歩いて距離を測量し、夜に宿泊地に着くと天体観測を行うという行動を180日間繰り返し、北海道の釧路の先まで往復して江戸に帰ってきます。そして、約2か月で東北と北海道の東海岸の地図を完成しました。この地図を見た幕府の役人は、その精密さと正確さに驚き、以後、幕府は日本全国の地図作りを彼に命ずることになったのです。

 そして、忠敬の真の目的であった、地球の大きさについては、最初の蝦夷地から日本全国へ測量の旅を重ね、その度に計算をして誤差を少しずつ小さくして、最終的には39,852kmと割り出しました。これは、現在の正確な数値との誤差、わずかに73kmです。

 
 このように、伊能忠敬は最終的には、部下の尽力もあり、実測した初の日本地図を作り上げ、地球の大きさを導き出すことも出来ました。なぜ、彼はこのような素晴らしい実績を残すことができたのでしょうか。それは、彼には“grit”「やり抜く力」があったからだと私は思います。

 “grit”という英単語は一般的には、勇気、気概、闘志などと訳されます。この言葉を成功者に共通する能力として近年、提唱したのがアメリカの心理学者、アンジェラ・ダックワースという人です。ビジネスやスポーツほかあらゆる世界で成功を収める秘訣、それは才能ではなく、“grit”「やり抜く力」であると彼女は言います。この“grit”「やり抜く力」には、情熱(passion)と粘り強さ(stamina)が必要だと言います。伊能忠敬には、並外れた探求心と学びに向かう力(passion)がありました。そして、地道にコツコツと地球一周分の距離を歩いて測量を続ける、ひたむきさとあきらめない心(stamina)を持っていました。忠敬の功績を見ると、この「やり抜く力」も彼に備わっていた才能のように思えてきます。

 しかし、“grit”は先天的な能力ではなく、鍛えること、伸ばすことができる能力であるとダックワースさんは言っています。何が“grit”を鍛えるのかというと困難な体験を重ねることだそうです。困難な体験を重ねることにより、“grit”が高まり、厳しい状況・場面にも諦めずに挑戦できるようになっていくのだそうです。

 皆さんは今、程度の差はあれ、学習や人間関係など様々な困難を抱えているはずです。なかには非常につらい気持ちを抱えている人もいるかもしれません。しかし、悲観的にならないでください。困難を抱えている今が、あなたの成長のチャンスなのです。苦しさはいつか、和らぎます。そして、困難を乗り越えた時にあなたの“grit”は確実にレベルアップしています。
 
 暑い夏に負けずに、学習、進路活動、部活動に励み、“grit”「やり抜く力」を鍛えてください。2学期の始業式には、一段とたくましくなった皆さんの顔を見られることを期待しています。

 私のお話は以上です。

 

○4月6日(金)
 1学期始業式において次のようなお話をしました。
 
 本日は平成30年度の始業式です。始業式に当たり、皆さんに決意を新たに充実した学校生活をおくってもらうために、今日は「目標を達成するために必要なこと」についてお話ししたいと思います。
 
 さて、皆さんは先日まで行われていた、ピョンチャン・オリンピック・パラリンピックで一番、印象に残っているシーンは何ですか?女子のスピードスケートやカーリング等、日本人選手の活躍は目を見張るものがありました。その中でも、多くの人がナンバーワンにあげるのは、男子フィギュアスケートで金メダルを獲得した羽生結弦選手ではないでしょうか。

 羽生選手が金メダルをかけてフリーの演技を行っていた時、私は前任校の2年生の生徒と一緒に修学旅行先の沖縄、那覇空港のロビーで帰りの飛行機を待っていました。大型のテレビに映る羽生選手の演技をロビーにいた大勢の人々が固唾をのんで見守っていました。演技が終わり、羽生選手が金メダルを確信させる笑顔を浮かべた瞬間、ロビーにいる多くの人たちから拍手と歓声が上がりました。隣に座る見ず知らずの人と同じ喜びと感動を味わっているのが実感できました。そして、こんなにも多くの人々に感動を与える彼の演技はもちろん、その生き方について、改めて考えてみたいと思いました。
 
 修学旅行から帰ってきて、一冊の興味深い本に出会いました。テレビにもよく出ている脳科学者、茂木健一郎さんの『やり抜く脳の鍛え方』という本です。この本は、アメリカの心理学者アンジェラ・リー・ダックワースの「やり抜く力=グリット」という考え方に基づき書かれたものです。ダックワース氏によると、様々な分野で成功している人達に共通するのは、才能のある、なしではなく、物事を最後までやり抜く力であり、これを彼女は「グリット」と呼びました。今、アメリカで非常に注目されている考え方です。この力を伸ばす具体的な方法として、茂木先生は「やり抜く脳」の鍛え方を紹介しています。
やり抜く力の乏しい人、これがよく言う「三日坊主」になる人です。茂木先生は「三日坊主」に陥りやすい人の共通点として、次の3点をあげています。
  1.  ゴール設定がなされていない
  2.  今やるべきことが明確でない
  3.  具体的な報酬が容易されていない

 裏を返すと、この3つの点をしっかりと行えば、物事をやり抜く力が育ち、成功者になれるということです。ちなみに、3点目の報酬については、「この宿題をやったらチョコを1個食べよう」というような小さなもので良いそうです。些細な報酬でも、脳は十分に活性化し、ドーパミンという幸せや喜びを感じる脳内物質を出すそうです。
 
 羽生選手の話に戻ります。彼が私たちに、あれほどの感動を与えたのは、オリンピックの金メダルを2大会連続で取ったから、だけではないと思います。オリンピック直前にケガをして、その後の大会を欠場し、出場すら危ぶまれたオリンピック本番で、最高のパフォーマンスを見せ、見事に復活したからだと思います。まさに、不死鳥のごとく。

 羽生選手は何故、復活し金メダルをとることができたのか?茂木先生があげた、さきほどの3点にあてはめて考えてみたいと思います。羽生選手にとってのゴールは、もちろんオリンピックで金メダルを取ることだったと思います。1点目のゴール設定は大変、分かりやすいと思います。
 2点目の「今やることの明確化」はどうでしょうか。オリンピック、ショートプログラムの前日のインタビューで羽生選手は次のように言っています。
 「とにかく、やるべきことはやってきました。2か月間滑れなかった間も、とにかく努力をし続けました。その努力をしっかり、結果として出したい」滑れない時の努力とは、どのようなものだったのでしょうか。大会後の彼の話によると、陸上でジャンプのフォームを固めたり、心理学やメンタリティに関する本を読み、メンタルトレーニングを行っていたそうです。そして、大会の日程に合わせて、より難易度の高いジャンプの練習を段階を追って行っていったそうです。今やれることをしっかりと理解し、やるべきことを実践してきたことが窺えます。
 では、3点目の、羽生選手にとっての報酬とは何だったのでしょうか。もちろん、金メダルでしょう。でも、それだけではないように感じます。彼は東日本大震災で自ら被災しながらも、被災した多くの人たちを応援するためにスケートを続けてきました。彼がオリンピックで金メダルを取ることを多くの日本人が期待していました。彼にとっての報酬とは、その期待に応え、自分を応援してくれた多くの人たちの喜ぶ姿を見ること、人々を幸せにすることだったのではないでしょうか。
 
 さて、3年生は、いよいよ自らの進路実現に挑む年になりました。そして、2年生は、これからの自分の進むべき道をしっかりと定めていく一年になります。皆さんが自らの未来を切り開くためにも、羽生選手のように逆境にも負けない、やり抜く力を身につけることが大切です。そのためには、具体的な目標を立て、それに近づくために、今やるべきことを明確にすることが大切です。大きな目標を達成するために、今やるべき小さな目標を一つずつ達成していきましょう。そして、目標が達成されるごとに自分へのごほうびも忘れずに用意してください。先生方も是非、生徒の小さな一歩を褒めてあげてください。それが何よりの報酬になると思います。

 それでは、早速、今日、この日から、今やるべきことをやり始めましょう。
 
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